AVを見せられる、AVの真似を求められる、という性被害。

資料

私が「なにかおかしい」と思ったきっかけは、若い女性からの性の相談で「恋人から性行為中に『妊娠させるぞ』と脅される」というものでした。

その若い女性と相手男性との間でいろいろあって、私が間に入ったときに、相手男性は(普通の会社員で驚いたのですが)「プレイのつもりだった」というのです。男性はAVで使われている言葉が女性を喜ばせるもの?だと勘違いをしていたのです。AVで行われている行為を女性が喜ぶことと勘違いしているのは、決して一部の認知のゆるい人たち(認知全般ゆるい人たち)だけに起きていることではないのではないか、と思ったのです。

「AVを見せられる性被害」も報告されていますが、視聴した男性がAV作品中の行為を女性が喜ぶプレイだと思って女性に行おうとする、「AVの真似を提案される」ということもあるようです。

以下ポルノ・買春問題委員会の論文・資料集から引用します。

ここでは、ポルノグラフィの影響によって、子どもや妻・恋人に生じている性犯罪・性暴力被害の具体例を紹介する。それらは、ポルノ・買春問題員会が、全国の婦人相談員および女性弁護士(計約2500人)を対象に、2002年に実施した「ポルノに関連した被害についてのアンケート」調査によって明らかになったものである。

(『ポルノ被害の実態と分析―「ポルノに関連した被害についてのアンケート」調査結果報告(ポルノ・買春問題委員会『論文・資料集』4号 2003年)。引用は22頁、48~49頁。)

 まず、子どもや妻・恋人に生じているポルノグラフィの影響による性犯罪被害の実例である(回答者はいずれも弁護士。いずれも、被害者がポルノを直接見せられたり、ポルノのまねをするよう要求されたり、加害者がポルノの日常的ユーザーであることを知っていた事例)。

・4歳の娘が、「幼児ポルノの愛好者」である父親に、「父と入浴中、父の性器をにぎる、なめる、両足を開いてポーズをとる等の行為を強要され、性器に父の指を入れられた(子どもの話ではっきりしないが強姦未遂の可能性あり)」

・12歳の娘が父親に、「成人男性と高校生と思われる少女が性交しているビデオを視聴させられた上で、ビデオの少女の真似(裸でベッドの上で両足を開いてポーズをつくってみせる。自分の指や物を性器に入れて声を上げてみせる。)をやらされた。その後で強姦された」

・10代の女児が見知らぬ男性に、「性行為のポルノを見せられた上、強姦された」

・16歳の娘が父親から、「長時間、日常的に、いろいろなポルノを見せられていた」(青少年保護育成条例違反)

・32歳の妻が夫に、「変態的ポルノを見せられた上で強姦された」

・36歳の女性が(一時交際していた)同居人の男性に、「殺人ポルノなど残虐なポルノを視聴させられた上で、強姦され、致傷」

・37歳の女性が恋人の男性から、「ポルノを模倣して、ベッドに縛られ強姦された」

・28歳の女性が夫から、「性行為に関するビデオを見せられた上、売春を強要されていた」(売春防止法違反)

次に、主に妻・恋人に生じているポルノグラフィによる性暴力の典型例、「ポルノ模倣行為の強要」の具体例を紹介する。「ポルノ模倣行為の強要」とは、夫や恋人などから、多くの場合ポルノグラフィを見せられた上で、ポルノに描かれているのと同じような性行為を強要される「性暴力」被害である※1。この被害事例は全部で73件あり、そのうち71件で加害者は夫、恋人、近親者のいずれかであった。この事例の解答者のほとんどは婦人相談員である。

 以下が、強要されたポルノを模倣した性行為である(最初の事例のみ被害者が女児、加害者が父親で、2つ目以降はいずれも被害者は成人女性、加害者は夫または恋人の男性。多くの事例が複数件数の回答あり)。

・「大人の男の人が高校生の女の子とエッチしているビデオの女の子のまねをさせられた。裸でベッドの上で両手を開いてポーズを作ってみせる、自分の指や物を性器に入れて声をあげてみせる、セックス、など」

・「革ベルトでたたく、木製ペニスを挿入し、そこを蹴る」

・「両手をしばられ、いやがると殴られたりしてアザを作る」

・「フィスト・ファッキング〔膣や肛門に手や拳を入れる行為〕」

・「複数の男性による同時性行為の強要」

・「スワップ、3P」

・「アブノーマルなセックスないし変態的セックス」

・「フェラチオの強要」

・「アナルセックス(肛門性交)」

・「顔面射精」

・「精液を飲まされる」

・「外を裸で歩くように強要された」

・「夫の目の前で尿をする行為を強要」

・「男性のいいなりになる」

・「裸でオナニー行為をするように強要」

・「映像と同じ服を着用、性行為」

以上、見てきたように、ポルノグラフィが主に使用・消費される家庭において、ユーザーである父、夫、恋人から、その子どもや妻、恋人が、ポルノグラフィに明白な影響を受けた性犯罪・性暴力の被害を日々、受け続けている。子ども、そして妻・恋人こそ、ポルノ・ユーザーである男性にとって、最も身近にいて、最も口を封じやすい女性だからである。この重大な事実が、あまたあるポルノ影響論の実験室研究でほとんど表れない、もう1つの「限界」である。

※1なお、この「ポルノ模倣行為の強要」という「性暴力」事例と先に示した「性犯罪」事例との境界は、かなりの程度、被害女性ないし回答者の主観にもとづく。後者は、被害者が明白な拒否・拒絶を示し、激しく抵抗したにもかからわずにセックスを強制された場合で、前者は、被害者が明白な拒絶や強い抵抗をすることができず、外形的には黙示の同意を示したと見える場合を指すと推測されるからである。しかし前者にあっても、被害女性は性行為を「強要された」と認識しているわけであり、夫らの行為は本来的に強制わいせつないし強姦行為である。

ポルノ・買春問題委員会(APP)『論文・資料集』vol.9

ポルノ被害と女性・子どもの人権 2009年10月 p32~p34

この資料は2002年の調査のものであり、相談事例として挙がっているものですが、家族や恋人との間によって起きている性被害です。

最近のAV作品では「不同意から暴力などで強引に進めていったのに(性的に気持ちいいから?)女性が受け入れ和姦になる」という荒唐無稽なストーリーが「売れ筋」なのだそうです。ポルノの視聴によって実際の性行為に影響が生まれることはわかっているので、売れるからどんどん作られる=売れる傾向のAV作品がAV業界のメジャーな作品になっていることでも、多大な影響が想像されます。

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