私は幼児期から成人後も多くの性暴力被害に遭ってきたことから、性暴力、性搾取、性売買構造に反対しています。日本の性暴力と女性蔑視は、アダルトビデオ(ポルノ)の影響が大きいと考えています。
私はもともと、広告や映画、出版、報道、番組制作の現場で仕事をしてきました。映像系の表現者でしたから、性的表象は自由であるべきと考え、積極的に映像制作現場にも関わってきました。しかし、現場を知れば知るほど、日本の性的コンテンツは、女性蔑視と性搾取で成り立っていると気づきました。特に、制作現場では、逆境環境に置かれた人、発達特性ある人、性暴力被害者の性的自傷やトラウマの再演、解離症状が搾取されています。
制作されるコンテンツのほとんどは、女性を虐待することで性的興奮を煽る内容であったり、明らかに法に触れる行為を肯定する内容です。女性を虐待し凌辱する作品が、18歳以下の子どもたちが容易にアクセスできる状態にあります。子どもの目に触れないように規制する法整備も足りません。子どもたちは、学校や家庭などで性的コンテンツにアクセスしてしまいます。アダルトコンテンツの真似をする子ども間性暴力が増加しています。しかし、子ども間で起きる性加害を防止する法整備が足りません。子どもが加害者となるだけでなく、性的客体化された表象に囲まれた子どもたちの自尊感情が毀損され、性搾取されやすくなっています。
こういった問題に、「アダルトビデオ出演被害防止・救済法」成立前から、性暴力被害者、性搾取被害者が声をあげていましたが、出演強要被害以外の被害者は、支援からこぼれ落ちてしまったままです。「アダルトビデオ出演被害防止・救済法」施行後、震災や貧富の差が広がり、性的客体化された広告やアダルトコンテンツが蔓延しています。脆弱な立場の女性や子どもが直接性搾取作品で出演者として被害に遭うだけでなく、性搾取コンテンツに影響を受けた大人たちが周囲の一般女性や子どもたちに性加害するリスクが高まっています。
刑法が改正され、不同意性交等罪、撮影罪、16歳以下の子どもへのグルーミング罪が創設されました。脆弱な立場の人への同意の強要も犯罪として立件されるようになりました。それなのに、アダルトコンテンツの多くは、いまだに性犯罪を肯定する作品ばかりである問題は、改善しなければなりません。
イギリスでは長年、性犯罪とポルノの影響が問題視されてきました。包括的性教育の影響でポルノにアクセスする子どもが増え、子ども間性暴力や性的逸脱が増加した問題が追及されています。日本のアダルトコンテンツは、海外でも極めて醜悪だと指摘されており、所持すること自体が犯罪になる国々もあります。日本女性が日本のアダルトコンテンツと同様な性行動を好むのではないかという偏見を持たれています。海外に出た日本女性がせアダルトコンテンツを真似た性被害に遭う事件も相次いでいます。日本の女性と子どもの尊厳と安全を守るための法律が必要です。
共同代表 郡司真子