つながり、強化しあうポルノ被害

深い関わりのある性風俗産業とAVポルノ

AVポルノは性風俗産業とも深い関わりがあります。
AV女優が性風俗従事者になることもあれば、性風俗従事者がスカウトされてAVに出演してきた経緯もあります。➡日本のAV史（「痴女」はSM、イメージクラブで働く女性のプレイから、等）
今はAV女優だけではギャランティが少なく生活ができないそうで、性風俗で働くことを決めた女性たちが、宣伝のためという名目でノーギャラや僅かな額でAV出演を勧められることがあるそうです。
AVに出演すると性風俗での単価が上がることもあるとのこと。

性風俗のプレイがAV作品に影響することもあれば、AVポルノの影響から、視聴者である男性が求めるもの、需要が生まれて、性風俗で求められるようになるでしょう。
最も多大な影響を及ぼしているのは、AVポルノですが

AVポルノ、性産業の被害は、出演者や性売買従事者だけが当事者ではありません。

社会とつながっているAVポルノ被害

AVポルノは性産業とともに、性売買の一形態ともいえます。

＞実写のポルノグラフィは、生身の女性を使用して作られる。それは、女性の身体を性的目的で使用する権利を男性間で売り買いする「性売買」の一形態であるとみることができる。
（「証言　現代の性暴力とポルノ被害」p31）

AVポルノの影響は、AVポルノそのものや視聴者、性産業業界だけではありません。
視聴者である男性がいる家庭、職場にも多大な影響を及ぼします。
しかも、相互に強化しあっているのです。

AVポルノの影響が、
公共の場での性暴力を生み、性被害当事者を生み出し、
家庭では妻へのレイプや子どもへの性虐待を招き、
学校・職場ではセクシュアル・ハラスメントが生まれやすい環境を作り、

こんどは
家庭で性虐待被害を受けた女性が、性産業の中に追いやられ、
(外国の複数の調査では売春に従事している女性の50％から90％が子どもの時に性虐待被害体験を持つ)
職場のセクシュアル・ハラスメントが女性を職場から追い出し、ポルノグラフィをはじめとする性産業に追いやる…

性暴力の相互強化関係が生まれているのです。

ポルノ被害の分類

マッキノン^※分類によるポルノ被害には、ポルノに直接かかわっている人の①「ポルノの強制行為」
　ふたつめは②「ポルノの押しつけ」と呼ばれる家庭内や職場などで意に反してポルノ映像やヌード写真などの視聴を強要されたり、ポルノを模倣する行為を押しつけられる被害をあげ、
　３つめは特に暴力ポルノなどの特定のポルノの反復視聴により、性暴力への禁忌と心理的制御が取り除かれ、実際に性暴力を引き起こす③「ポルノに起因する性暴力」があり、
ポルノグラフィが広く社会的に流通・売買・頒布されることで女性の社会的地位が低下し、女性差別の意識や態度が助長される④「ポルノの取引行為」があげられています。
⑤「ポルノを通じた名誉棄損」では誰かの顔写真で裸などの卑猥な合成画像をつくる。誰かの実名や著名人の芸名などでポルノ小説やポルノ的記事を書くこと、逆恨みで知人が性的な怪文書を書いて近所や会社に送りつけるなどがあり、この被害は著名人や反ポルノ運動に従事するフェミニストたち自身がターゲットになりやすいとされます。

④「ポルノの取引行為」によるポルノ被害とは↓

マッキノン分類によるポルノ被害の類型

女性たちから人生のこれまでを聞くことがあると、必ずといっていいほど、性被害、セクハラ、男性とのトラブルの話しが出てきます。そしてそれが進路やキャリアに影響したという体験談は決して少なくありません。

女性が家庭で、社会で、セクハラや性被害に進学や夢を妨害され悩んだという体験談は頻繁によく聞きます。性被害体験から性産業の世界に飛び込んだ女性、困窮から性売買従事を選んだ女性、性売買産業で働かなくても、水商売で資金を貯めたり困窮をしのいだ女性もいるでしょう。

これらはつながっていて、AVポルノは社会に多大な影響を与え、強化しあっているのです。

ポルノ被害とは、AV出演者や性産業従事者だけでなく、一般女性が被害当事者でもあります。

中里見博氏がポルノ被害の５類型から、より包括的な５つの大区分(制作被害、流通被害、消費被害、社会的被害、存在被害)を設け、5大分類にしています↓

スマホや小型カメラなどで簡単に撮影ができるようになり、盗撮被害が増えています。アプリなどで簡単にアイコラが作れるようにもなりました。上の表を見てみても、AV出演や性産業に従事していない女性、女児にも、広い範囲でポルノ被害が起きうることがわかります。

(長谷)

資料　「証言　現代の性暴力とポルノ被害～研究と福祉の現場から～」
　　　　ポルノ被害と性暴力を考える会編　東京都社会福祉協議会発行